お客様の依頼でグリーティングカードを作りました。
依頼は、 施主様は長年勤めた職場を退職するにあたり、一緒に働いてきた皆様に、感謝の気持ちを込めて、一人一人、此れまでのお礼と和紙メッセージカードを手渡すそうです。
感謝という文字は施主様に無理をいって書いていただきました。
当初施主様は筆文字の活字でとうい依頼でした。そこで筆で書いてみてはと持ち掛けましたところ、小学校以来筆を持ったことがないから出来ないとのこと。
私は字が綺麗とか上手いとかではなく、カードを受け取る方に感謝する「こころ」を書くだけですと、その文字に「こころ」があるなら受け取った方はきっと感じるはずですと説得し、筆ペンではなく大きい筆で、墨汁でいいのでそしてコピー用紙でいいので書いてくださいとお願いしました。
筆ペンでも書と思う方が多いと思いますが、筆と筆ペンでは全く違います。ボールペンになれた現代人は筆ペンは簡単に上手に書けるツールでとても便利です。
しかし、墨を付けて筆で書いた文字と比べてみると別物です。筆を握った握力、墨を付けた一画目、墨が無くなる最後の一画、筆の動き(運筆)筆を抑えた圧力も紙の上に残ります。
出来れば山十製紙の書道用画仙紙を使っていただければ、 そしてさらに息遣いまで 感じることができます。残せます。
このメッセージを受け取る方は施主様の書いた文字以上に思いやりや温かさもきっと伝わるはずです。
カードを頂いた方は字が下手だ、うまいだという前に、あなたに対する施主様の「こころ」をダイレクトに感じて頂けるはずです。
ハンコも消しゴムで作っていただきました。朱の色が入るだけで全く違ったおもむきになりました。ひとつの書として完結しました。
封筒も手漉き和紙を打ち抜いて作りました。生成り未ざらしの楮と晒の楮を使い、重ねることで中身のカードを優しく包み込むことができました。
施主様は長年勤めた職場を退職するにあたり山十製紙のペーパーアイテムをご用命頂き、少しでもお役に立てられたような気がしました。